第一回「氷雪の門」静岡上映会おぼえがき

 小雨まじりの涼気が久しぶりに駿河湾を包み込んだ八月十五日の昼下がり、JR静岡駅に隣接する中央郵便局の上階、静岡音楽館AOI講堂において、第一回「氷雪の門」静岡上映会(中嶋文雄会長)が開催された。同市市役所本館の静岡市市民ギャラリーでは、「日露戦争百周年特別展・パノラマでつづる栄光と不屈の歩み・・・激動の二十世紀展(近現代史研究会主催)」が開かれるなど、同憂諸賢にとっては、とかく"日本で一番忙しい日"であるにもかかわらず、AOI会館には約百四十人が来場し、北辺の地に置き去りにされた歴史の封印をとく二時間を共有した。
 平凡な乙女たちの崇高な責任感と凄絶な決断は、来場者に「真の人間らしさとは?」を自問する機会を与えたようだ。ドラマが終盤におよぶと暗い客席のあちらこちらからすすり泣きが聴こえた。上映会が終わっても、感動の余韻はロビーにとどまり、樺太引揚者の婦人は、「もっと、もっと、この事実を世間の人達にも知ってほしい」と痛切に訴え、「どうしてテレビ局はこの作品を放映しないのだろう?」という、もどかしさを含んだ意見も錯綜した。
 主催者側の一員として印象深かったのは、繊細な群像が象徴する「日本人の美しさ」を再認識する建設的な声が多かったことだろう。かえりみて、あの時、暴虐の限りを尽くしたソビエト兵が防衛しようとした「大祖国」は、半世紀を待たずに地上から消滅しているのである。

(野村)










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