世良田忠順寄稿
11月号

“杞憂”を抱く位でちょうど良い?
〜危機意識の稀薄な日本人〜


酷暑の夏
 今年の夏は、尋常でない暑さだった。何せ、夜になっても室温が三十度から下がらない日が殆どで、もはや寝苦しさなど通り越し、息苦しさすら感じた程だ。東京では日中の最高気温三十九・五度という観測史上の最高値を計測、最低気温なのに三十度を下らぬ日があったり、連続熱帯夜の観測史上最長を記録したりと、まさに記録ずくめの夏であった。
 大都市の平均気温も年々上昇していて、とりわけ東京は、明治からの凡そ百年間で平均三度も上昇しており、この儘のペースで気温の上昇が続けば、二、三十年後には、都市には人が住めなくなる、と言う識者までいる。
 そして、日本のみならず世界各地で頻発する、異常気象による災害や事件の数々を耳にする度、今、我々の住むこの地球という星に、何か容易ならぬ異変が起こっているのを感じるのは、私だけではあるまい。こうした異常気象と、世界的な規模で懸念されている地球温暖化に対する危機感を、多くの国々、あらゆる民族間で共有し、これ迄のような、効果のはっきりしない、気休めのような対応では無く、より具体的で思い切った対策を、国家ぐるみで速やかに立てるべき時期に来ているのではないか。
地球温暖化警告レポート
 そんな思いで今年の猛暑を振り返っていた時に、米国国防総省の防衛顧問・アンドリュー・マーシャルなる人物が中心となってまとめた、地球温暖化に関する警告レポートの存在を知った。以下、その要旨を紹介する。
 同レポートの予測によれば、今後、地球温暖化に伴う異常気象は一部地域で激化し、太平洋地域でも激しい嵐や台風が発生する。アジア・北米でハリケーン・台風・洪水が猛威を振い、西暦二〇二五年になると、オランダのアムステルダムやハーグなどの低地は水浸しとなり、英国は氷河の融解による暖流の流れの変化の為、シベリアのように寒冷地化する。飢饉がアメリカ中西部の穀倉地帯を襲い、嵐が中西部耕地を破壊する……そういえば、確かに最近の日本も、季節外れの、しかも例の無い程の大型台風や集中豪雨に見舞われることが増えている。これも、激化する異常気象の予兆の一つなのだろうか。
 更に同レポートは、水資源の不足が深刻化し、“環境難民”が先進諸国に大量流入して、西暦二〇二〇年頃迄に水や食糧の奪い合いによる戦争やテロが多発する、と予測、そうした紛争の激化が核保有国を増大させ、畢竟、この地球温暖化が、地球に住む人類の生存環境に壊滅的な結果を齎す、としている。
 ちなみにこのレポートは、当初、米国国防総省がその存在を隠匿していたと非難され、国防総省側が釈明する一幕もあったという、曰くつきの代物である。レポートに関わったCIAのコンサルタントの話では「レポートの存在を殊更隠していた訳ではない。あくまでこれは最悪の事態を想定したもので、実際におこる可能性は極めて低く、報道のように差し迫った危機を予言するものではない」ということであったが、それは、こうしたものが内外に与える影響、乃至はパニックを回避する為にされる、ありきたりの「方便」と思える節も無いでは無い。穿った見方をするなら、それほど状況は危機的だ、ということかも知れぬのだ。少なくとも私には、この戦慄すべき近未来シミュレーションを「杞憂である」と一笑に附せる確信は無い。
日本の心構えは?
 新鮮な空気。濁りのない水。いずれも人間が生きていく上では欠かせない、基本中の基本資源である。石油も貴重だが、極端な話、石油が無くても生物は生きていける。しかし、水と空気が無ければ、生命は存在することさえ出来ない。その、水と空気を巡っての熾烈かつ凄惨な争奪戦が、今世紀以降に激化してゆくとするなら、これはもう言葉本来の意味における、まさに「生存競争」の時代が始まることに他なるまい。
 そして、米国がこうした地球環境の問題を、国家の安全保障という観点から取り上げ、起こり得る危機に対する警戒と対策を講じようとしているのに対し、一方の我が国には、そうした危機意識が全く感じられないのは、どうしたことであろう。
 まあ、これは「一事が万事」であって、要は国家の安全保障という眼目に対し、日本人はあまりにも意識が稀薄、という一事に尽きてしまうのだが、そんなことでは、来たるべき“環境危機”を乗り切れることは到底叶うまい。
「いざその時」が来てから、慌てて準備しても遅いのだ。外国からの不当な圧力や要求を拒絶したくても、こちらに相応の備えが無ければ、「力」を背景にした先方の横車を拒絶することは不可能である。勿論、この場合の「相応の備え」というのは、何も軍備だけに限った話ではない。国民の意識や精神、法律の整備、外国の工作機関への対策など、全ての分野に於いてである。
シナの末期的兆候
 とりわけ懸念されるのはシナの動向だ。どういうわけか日本のマスコミは、シナの「驚異的な経済発展」といった、薔薇色の側面ばかりを強調し、その影の部分については全く報道しようとしていないが、実際の状況は相当に深刻であって、なぜ我が国のマスコミがそのことに警鐘を鳴らそうとしないのか、全く理解に苦しむところである。
 新聞やテレビが報道しなければ何も無いのと一緒、というのが多くの一般人の感覚であろうが、事態はもうそんな暢気なことを言っていられぬところ迄来ている。
 シナ情勢を語らせれば、惧らく第一人者であろう宮崎正弘氏によると、シナの自然環境は、我々の想像を遥かに超えて、恐るべき速度で荒廃が進行しているそうなのだ。
 例えば、これ迄に砂漠と化してしまった彼の国の土地は、既に日本の総面積の凡そ七倍にも達し、更に年々、ほぼ富山県の面積に匹敵する三千平方キロが砂漠と化しているので、この儘のペースで行けば、十二年後にはもう一つ、日本の面積分が砂漠になっている計算になるという。
 更に、地下水や河川、港湾の汚染・枯渇も深刻で、人民はまともな飲料水や農業用水の確保にすら苦労し、しかも、ただでさえ近年は農村部と都市部との貧富の格差が拡大して不満を鬱積させている農民は、その多くが荒れ果てた土地を捨てて浮浪民と化し、大量に都市に流入して、その治安悪化に拍車をかけている、ともいう。そして、それらマフィア化した暴民の一部は、この日本にも入り込み、近年の兇悪犯罪増加に一役買っているのだ。
 これらは全て、シナ政府の掲げた闇雲な経済利益至上主義に原因がある。シナが経済発展を続ける限り、環境破壊はますますとどまるところを知らず、打ち続く乱伐・乱開発は、深刻な砂漠被害を齎し、急速な工業化は海洋汚染、大気汚染をいっそう進行させていくに違いない。その悪影響はシナ一国のみならず、日本も含めた近隣諸国にも大きな打撃を与え、ゆくゆくは大量の“環境難民”が発生して、それらが大挙して日本に流入してくる可能性を孕み、やがて行き着くところは、ペンタゴン・レポートにあったような、決定的破局であろう。
 はっきり言おう。シナ経済の発展は百害あって一利無し。日本は今すぐにでもシナへのODAを止めるべきなのだ。シナのこれ以上の経済発展など、全く日本の為にならぬばかりか、長い目で見た場合にはシナ人民の為にもならず、地球環境を悪化させ、破壊していくだけのものだ。よって、シナの経済発展を手放しで喜んでいるような日本人は売国奴というだけで無く、「地球市民」という名にすら価しない。
危機に目醒めよ
 大東亜戦争終結後、只管平和ボケの惰眠を貪り、占領憲法の呪縛の解けぬ儘、未だに浮わついた幻想に酔いしれた愚民を数多抱えている日本。こんな体たらくで、やがて来るかも知れぬ破局に対して、果たして有効な対策を立てられるのか、甚だ心もとない。 
 とにかく日本人は、あらゆる危機に対し、もっと想像力を働かせるべきである。危険が何たるかを予測していてさえ、その回避は困難な場合が多いのに、ましてや何も想定していなければ、全く対処の仕様も無いではないか。危険を察知するのは、自然界の生物の本能だ。それを失ったら、間違いなくその生物は滅ぶ。国家や民族とて例外では無い。もう時間は無い。日本国民よ、危機に目醒めよ。

【振り仮名】
殆ど=(ほとん)ど
凡そ=(およ)そ
この儘=この(まま)
耳にする度=みみにする(たび)
これ迄=これ(まで)
速やか=(すみ)やか
水浸し=水(びた)し
無い程=無い(ほど)
畢竟=(ひっきょう)
曰くつきの代物=(いわ)くつきの(しろもの)
殊更=(ことさら)
乃至は=(ないし)は
思える節=思える(ふし)
穿った見方=(うが)った見方
杞憂=(きゆう)
叶う=(かな)う
懸念=(けねん)
薔薇=(ばら)
暢気=(のんき)
彼の国=(か)の国
既に=(すで)に
齎し=(もたら)し
孕み=(はら)み
価しない=(あたい)しない
只管=(ひたすら)
数多=(あまた)
体たらく=(てい)たらく
甚だ=(はなは)だ





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