『俺は、君のためにこそ死ににいく』企画発表会
(平成17年8月22日 赤坂プリンスホテル五色の間)

 昭和49年、村山三男監督のもと、助監督として『樺太1945年夏 氷雪の門』の製作に参加した映画監督の新城卓さんが、われらが石原慎太郎都知事とタッグを組んだ。
 大東亜戦争末期、知覧で食堂を営み、出撃して征く特攻隊員たちから「お母さん」と慕われた故・鳥浜トメさんの目を通して描く「無残にも美しい青春の物語」が、来春クランクインする。生前のトメさんと昵懇の間柄だった石原知事が製作総指揮、脚本の書下ろしを担当し、新城監督がメガホンをにぎる。
 今年は「戦後60年」ということもあり、多くの戦争映画が製作、封切されているが、こうした一連の復元作用の画竜点睛となるであろう作品の企画発表会が、平成17年8月22日、赤坂プリンスホテル五色の間で開催された。

 開会は16:30。少し早めに会場入りしてみると、約二百人の来場を見込んだ座席が用意されていた。

 正面の3Dと見まごう立体的なディスプレイは、靖国神社と万朶の桜。圧巻である。

 さすが映画&マスゴミ関係者の世界。スモーカーが多いためか、待機スペースはタバコ吸い放題、コーヒー飲み放題・・・この時代、私にとってはユートピアだ。
 しかし、その傍らには、少なからずトメさんと特攻隊関係のパネルが厳粛に展示されていた。







 一巡する前に、涙が出そうになる。時空を超えた特攻隊員の前では、如何なる言い訳もできない。
 どんなに偉そうなことを言ってみても、とどのつまり、私は甘ちゃんに過ぎないのだ。

 私はトメさんと、彼女を囲む隊員たちの笑顔に打ちひしがれた。こんな日本にしちまって、本当に、本当に申しわけありません・・・平成の太平に安穏とする者として、この人たちに対し、ほかに、どんな言葉を思いつく?




 16:30。定刻どおりに司会者の仕切りで、知事と監督が登壇した。


 石原知事は、トメさんとの邂逅と、映画の素材となったもろもろのエピソードを語る。毒舌を以って鳴る知事が、ひとりトメさんについては「菩薩さま」と無垢になるのが驚異だった。
 トメさんが亡くなり、時の宮澤喜一首相に、ぜひともトメさんに国民栄誉賞を授与してくれ、と打診したところ、にべもなく「キリがないでしょ」と却下されたらしい。私も宮澤さんには、初対面の時、「出身大学は?」と訊ねられ、東大でなかったものだから畢竟人間扱いされなかった記憶がある。聞いていて、如何にもありそうな話だと思った。もっとも、丙種になるため徴兵検査に醤油を飲んで臨んだ、と言われるような御仁から賞をもらっては、却って「菩薩さま」が汚れてしまいそうな気がしないでもない。不首尾はしかし、天の高邁な采配だろう。
 新城監督と知事は、「映画人」同士、古い知己の間柄。監督は、「あまりやかましく現場に首を突っ込んで来るようなら、石原さんに監督をやってもらい、私が都知事になります」と香ばしく牽制。

 質疑応答は、マスコミ人の杓子定規な問い合わせが相次ぐ。中には「田中康夫知事の新党日本をどう思うか?」などと、「企画発表会」という字が読めないほど国語力の欠落した質問をし、Tokyo MXTVの知事会見のノリで大目玉をくらう自称記者氏もいた。

 くだらない質問者が続く中、トメさんの次女、赤羽礼子さんが立ち上がる。

 昭和二十年当時、十七歳の女学生だった赤羽さんは切々と話した。同い年の特攻隊員が、「おれたちは国のためだけに行くんじゃないんだ。父や母、兄弟姉妹、親友、恋人、君たちのために行くんだ。あとを、宜しく頼んだよ」と、菩薩さまの娘に笑顔で言ったそうだ。
 赤羽さんの証言が、石原知事によって、『俺は、君のためにこそ死ににいく』というタイトルに収斂されたようだ。

 特攻隊員の万分の一の苦労も知らないが、私も異郷で、異民族を相手に、決して退けない局面というのを幾度か体験している。一歩間違えば生命を失いかねない場面もあった。それでも退けば自分一人でなく、日本人全体が笑われる。死中に飛び込む覚悟を決めるとき、家族や友人、知人、家の近所の人たち、いつも顔を合わす店の店員、果ては何年も前に自分を袖にした女や思想的に対立している連中の顔までが、次々に思い浮かんだ。どの表情も好ましい笑顔だった。・・・だから、十七歳の先輩の心境を、僅かなりとも理解できる気がする。

 ・・・正直なところ、赤羽さんの話が、知事や監督のトークよりずっと印象深かった。聞いているだけで、哭けてきた。

 肝心のキャスティング。トメさんを演じるのは人格的にも成熟した女優でなければならないが、これはトップシークレットだそうだ。以前、KKさんと仄聞したが、オフレコなのか、変更があったのか・・・KKさんなら、特攻隊の名誉を理解してくれているフランス人にも有効なPRができると思うんだが。


 東映の岡田社長。巧妙に左派陣営の突き上げをかわしながら、配給を決めた経緯をメディアに説明。


 新城卓事務所のプロデューサー東勝さん。新城監督を支え、我々の『氷雪の門』上映会では、実質的な窓口役を務めてくださっている。「私のモデル料は高いョ」と言いつつ、「本日のところは、どうかボランティアで」という私の軽口に快く応じてくださった。



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